選手のせい

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 聖華女子プロレス。事故死を出したことは大きかった。  SNSでは『リングで〇した団体』。  『聖華の選手は受け身もとれない。トレーニング不足』  というコメントで埋まった。  チャーム真紀はすぐに記者会見を開いた。自らも女子プロレス出身。温和そうな顔を最大限生かした。普通の女性よりも太い身体を小さく折り曲げ、 「選手のトレーニング不足です。もっとしっかり基礎練習をさせるべきでした」  と涙ながらに謝罪した。  らんは別室で若手選手に混ざって会見を見て、怒りで身体が燃えるような感覚に襲われた。「トレーニング不足」。これでは姉が悪いような言い方ではないか。 「ちょっと、全部選手のせいなの?」 「うちら結構練習してると思うんだけど」  若手たちが顔を歪ませ悔しそうにつぶやく。らんも同感だった。若いながらトップを走っていたりんは人一倍練習していた。  聖華女子プロレスは上場会社ではない。株主からの突き上げもなく、 「今後も聖華らしい、激しい試合をお届けします」  というチャーム真紀の言葉で幕切れとなった。
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