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「スーイ、これを」
ナイは私の手を開かせると、そっと二粒の宝石を乗せる。
いつの間に手に入れたのだろう。
青い石と、黄色い石の中にはたくさんの金の結晶のようなものが浮かんでいる。
それは幸せな結婚をした印。
愛の無い交わりをした者の石は現れない特徴だ。
「……母さんと、お祖母ちゃんの石ね?……私一度も見たことがなかった」
石は伴侶に与えられて、伴侶の身を護ると言われている。
「ナイ、あなたにも石をあげるわ」
私は、代わりに紫の石をナイの手に置く。
私の石にも同じように金の煌めきがたくさん見える。
「スーイのすべてを俺にくれるのだろう?」
「そう言ったわ」
「この石は俺が貰う。この二つはスーイに返そう」
そう言って青と黄色の石を摘まみ上げる。
「人はこの石の使い方を知らない。この石は命を与えるものだ。あの娘は結局俺に約束通り石をくれたな……」
黄色い石を目をすがめて光に透かす。
祖母の優しい目と同じ色の石は朝の光を受けて柔らかい焦点を結ぶ。
「え……それって、おばあちゃん?」
「この黄色はあの娘の目と同じ色だ。あれから長い時間がたったのだな」
ナイはしばらく石をそうやって見つめて、二つとも私の口の中に押し込む。
「一つはスーイに俺と同じ時間を与える。もう一つはこれから生まれる子に」
ナイが何か唱えると、石が口の中で発熱する。
「スーイ、石を受け入れて」
言われるままに石を受け入れる気持ちを作れば、石は形を失う。
口の中から石は消え去ったようだが、自分の身が何か変わったようには思えない。
「これでおしまい?」
「ああ、これでスーイはずっと俺のものだ」
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森には魔物が住むという。
そんな伝説はうんと昔の話だ。
それでも森近くに住む娘たちは、クヌギの枝に黒いリボンをかけておくおまじないをする。
「パガナーリに光る石をあげるわ」
そう唱えると、幸せな結婚ができるのだとか。
「朝から真夜中」 end
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