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(というか、私はどういう反応をすればいいの……?)
自身のハジメテを大金をはたいて買った。
それは、喜ぶべきことなのか、悲しむべきことなのか。それさえもわからず、カーティアはただその場に立ち尽くす。
「……あ、あの」
足が震えているのが、自身にもよくわかった。今更ながらに、怖気ついている。それを、嫌というほど実感させられる。
その誰かは、大股でカーティアのほうに近づいてきた。そして、その頬をするりと撫でる。
「……泣くな」
「……え」
ごつごつとした指が、カーティアの頬を撫でる。その感覚はお世辞にも心地いいものじゃない。
でも、カーティアが驚いたのはそこじゃない。……この声を、カーティアはよく知っていたのだ。
恐る恐る、彼の顔を見上げる。そうすれば、その鋭い金色の目とばっちりと視線が合う。……心臓が、どくんと跳ねた。
「泣かれると、やりにくいだろう。……カーティア」
その指がカーティアの目元を優しく拭う。まるで、涙を拭きとろうとしているようだ。
「……あなたは、その」
そっと口を開く。彼は、カーティアの言葉を待つように、じぃっとカーティアのことを見つめてきた。
ごくりと、息を呑んでしまった。
「……ヴィクトル・アリーヴァ様、ですよね……?」
そっと、彼の名前を呼ぶ。すると、彼はこくんと首を縦に振った。
彼の銀色の髪が、視界に入る。いつ見ても、硬そうな印象を醸し出す髪の毛だ。
「あぁ、そうだ」
彼は端的に返事をくれた。……余計に、カーティアの頭が混乱する。
「……わ、私のハジメテを買うのは……その、ヴィクトルさま、なのですか……?」
そんなわけない。心の中でそう思うものの、ジョットが嘘をつくとは思えない。だけど、どうして。
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