1.前世の記憶を思い出したのは、断罪の最中でした

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 煌びやかなパーティーホール。きらきらとしたシャンデリア。国内一の楽団が奏でる心地のいい音楽。  しかし、侯爵令嬢カーティア・ヴァイスにはもうそんなこと関係なかった。 「カーティア・ヴァイス! 僕はキミとの婚約を破棄する!」  声高らかとそんな宣言が耳に届く。瞬間、カーティアはその場に崩れ落ちた。  扇が手から零れ落ち、床にぶつかる。 「……ど、どう、して……」  口から漏れたのは、そんな小さな声だった。  その声はどうやら婚約破棄を告げた本人にしっかりと届いていたらしく、彼は目を鋭く細める。 「どうして? 散々ソフィアを虐めておいて、のうのうとそんなことを言うのか!」 「そ、それはっ……!」  床をバンっとたたく。けれど、それさえも彼には目障りなことだったらしい。  それを、瞬時に理解した。 (そもそも、その女が悪いのでしょう……!?)  婚約者の隣に立つ、真っ青な髪を持つ美しい少女。少女と女性の間の年齢である十八歳の彼女は、カーティアの婚約者である王太子オルフィーオに近づいた。そして、あっという間に懇意な関係となったのだ。  だから、カーティアは現実を正そうとした。そもそも、オルフィーオの婚約者はカーティアだ。  なのに、彼はカーティアを遠ざけ、ソフィアを側においた。それが、気に入らなかった。
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