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なので、虐めた。ただ、それだけなのに――。
「合わせ、キミの今までの行いは貴族令嬢にあるまじき愚かさだ。よって、王太子妃には相応しくないと判断した!」
高らかな宣言が続く。……カーティアは、床に地面を向ける。
(どうして、どうして……)
悪いのは間違いなく人様の婚約者に近づいたそのソフィアだろうに。真実の愛に溺れたオルフィーオには、そんなこと関係ないのだろう。
(そもそも、こんなのおかしいわ! まるで、『悪役令嬢』の断罪劇みたいじゃない……!)
……悪役令嬢?
不意に聞き馴染みのない単語が頭の中によぎって、カーティアは目をぱちぱちと瞬かせた。
(『悪役令嬢』って、なに? しかも、断罪劇って……)
そう思った瞬間、カーティアの脳内に『ディスプレイ』なるものが現れた。
『ディスプレイ』の中では、カーティアが今と同じ状態になっている。けれど、明らかに違うのは――自分が、その状態の当事者ではないということだ。
(……そっか。これ、『乙女ゲームの世界』なんだ……)
ハッとして、顔を上げた。美しい顔立ちのオルフィーオ。可愛らしいかんばせに怯えの色を宿したソフィア。
……まさに、美男美女。攻略対象とヒロインだ。
(そして、私の立場は悪役令嬢。ヒロインを虐め抜き、最終的に断罪される女……)
ぎゅっと手のひらを握った。
思い出すタイミングが悪すぎる。心の中でそう思いつつ、カーティアはオルフィーオの言葉を右から左に聞き流す。
そうじゃないと、頭がおかしくなってしまいそうだった。
いや、この世界が乙女ゲームの世界とか思っている時点で、頭がおかしいのかもしれないが。
「本当に、キミには手を焼いていた。が、これも未来のため。そう思って我慢していたが、ソフィアがそれは間違っていると教えてくれたんだ!」
オルフィーオがそう言う。……でも、もうカーティアにはそんなことどうでもいい。
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