399人が本棚に入れています
本棚に追加
(そもそも、私はいつまでここにいればいいの? 需要がなくなるまで、働かなくてはいけないの……?)
もしもそうだとすれば、解放されるのは十年以上後だろうか。もしかしたら、二十年先かもしれないが……。
「……逃げたい」
自然とそう呟いて、カーティアは扉を見つめた。……重厚な扉。多分、正攻法では逃げられないだろう。
ならば……。
そう思って、カーティアは開いた窓のほうに近づく。……窓から顔を出して、下を見つめる。
(……二階、いえ、三階かしら?)
だとすれば、落ちたらただでは済まないだろう。ごくりと息を呑んで、カーティアはそっと窓枠に手を突く。
……このままここで多数の男性に弄ばれるくらいならば。いっそ、ここで落ちてしまったほうがいいかもしれない。
「死んだとしても、それはそれで構わない」
どうして窓が開いているのかはわからないが、こういう選択肢を視野に入れてくれたのかもしれない。
……ごくりと息を呑む。高いところは好きじゃない。むしろ、怖い。だけど……。
「この際、背に腹はかえられない――!」
小さくそう呟いて、カーティアは飛び降りようとする。が。
「カーティア!」
後ろから、誰かに抱きしめられた。……驚いて、目を見開く。その人物は、カーティアの身体をぎゅうぎゅうと抱きしめている。……痛くて、背骨がミシミシと言っているような気がする。
「カーティア。なに、しているんだ」
「……ヴィクトル、さま」
恐る恐る顔を上げて、その人物の名前を呼ぶ。そうすれば、彼は今までに見たことがないほどに、焦ったような表情を浮かべていた。……その手は震えており、なにか怖いことがあったのは一目瞭然だった。
最初のコメントを投稿しよう!