2.身請け宣言

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「……死ぬ、つもりだったのか?」  震える声で、ヴィクトルがそう問いかけてくる。……視線を、合わせられなかった。 「どうして……」  ヴィクトルの口から、小さく漏れたその言葉に、カーティアはかっとなってしまった。 「どうして? そんなの、嫌に決まっているからじゃありませんか!」  もしかしたら、男性のヴィクトルにはカーティアが置かれている立場が、どれほどに劣悪なのかわからないのかもしれない。 (確かにこの娼館はきれいよ。高級娼館かもしれない。だけどっ……!)  そういう問題では、ないのだ。 「ここにいる、生きて存在するということは、不特定多数の男性に抱かれるということです。……そんなの、私、耐えられない……!」 「カーティア……」 「男性であるあなたさまには、わからないでしょうね。だって、金さえ出せば女性を抱ける側なのですから」  こんなこと、言うつもりじゃなかった。だけど、口が止まらなかった。ぽつりぽつりと言葉を投げつけて、ヴィクトルを睨みつける。……彼が、少し傷ついたような表情を浮かべる。そんな表情をする権利など、彼にはないだろうに。 「理解してくださったのならば、もう放してくださいませ。……それと、あなたさまはさっさと立ち去ってください」  もしも、ここにヴィクトルがいたら。カーティアが飛び降りた責任を問われるかもしれない。少なくとも、それはカーティアにとっても不本意だ。  そう思いつつ、ヴィクトルの腕の中で暴れる。……だが、彼はカーティアの身体を解放することはなかった。  それどころか、カーティアの身体を強く、それは強く抱きしめてくる。 「……そんなこと、俺は思っていない」  ……今にも、消え入りそうなほど小さな声だった。 「俺は、あなたを不特定多数の男に……それも、俺以外の男に抱かせるつもりなんて、これっぽっちもない」  ……けれど、彼は一体なにを言っているのだろうか? 「はっきりと言います。俺があなたを身請けします。今すぐ、娼館から出てく準備をしてください」
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