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彼の言葉の意味を、カーティアはすぐには理解できなかった。
何度か目をぱちぱちと瞬かせて、ぽかんとする。
「……は?」
しばらくして、カーティアの口から零れたのはそんな短い声だった。
(い、今、このお人なんて……?)
カーティアの頭は、彼の言葉を理解しようと必死に動く。でも、やっぱり理解できない。
そもそも、これは聞き間違いだろうに……。
「早く出て行く準備をしよう。邸宅に、あなたの部屋を用意している」
「……い、いや、いや」
邸宅とは、誰の邸宅なのだろうか?
頭の中が混乱して、理解なんてちっともできない。頬を引きつらせ、カーティアがゆっくりと振り向く。
彼の目が、カーティアだけを見つめていた。
「……なんだ?」
ヴィクトルが怪訝そうにそう問いかけてくる。
そのため、カーティアは震える唇を必死に動かす。
「いえ、その。……ヴィクトルさま、は」
「……あぁ」
「ど、どういう、おつもりなのですか……?」
問いかけは、震えている。
カーティアが彼の目を見つめて尋ねてみる。彼は、一瞬だけきょとんとしていた。
「あなたを、身請けするだけだが」
「そ、そのことの、真意です!」
そうだ。だって、身請けには多額のお金が必要だ。彼がそこまでしてカーティアを助けり義理なんてないだろうに。
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