2.身請け宣言

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「お金だって、たくさんかかります」 「金など、あなたのためならばいくらでも使う。……心配しなくてもいい」  そう囁いたヴィクトルが、カーティアを抱きしめる力を強めた。ぎゅうぎゅうと抱きしめられて、ちょっと苦しい。 「もちろん、家の金はあなたが自由にすればいい」 「……あ、あの」 「あなたのために、俺はもっと稼ぎを増やそう」 「い、いや、あの……」  その話は、おかしい。 (家のお金を自由にって……それは、女主人が出来ることでは?)  そう思って、余計に頭が混乱する。  そんなカーティアを見つめるヴィクトルの目は、何処までも愛おしそうだった。 「その、ヴィクトルさま。……いくつか、お聞きしたいことが」  控えめにそう声をかければ、彼は「いいぞ」と言ってくれた。その腕はカーティアの身体に回されたままだ。  ……解放してくれる素振りは、ない。 「あの、私は。ヴィクトルさまに身請けされた後、どうなるのでしょうか……?」  多分ではあるが、彼の愛人とか。そういうものになるのだろう。  愛人とは日陰の存在だ。それでも、ここで不特定多数の男性に抱かれるより、ずっといいとは思う。……ヴィクトルは、乱暴にはしないだろうから。 「そんなもの、決まっているだろう。……俺の妻になるんだ」 「……え」  でも、返ってきた言葉は予想外すぎるもので。  カーティアの口から、ちょっと上ずったような声が零れた。 「あなたは俺の妻になる。初めは婚約者として滞在してもらうことになるだろうが、そんなもの誤差だ」 「……誤差」 「あぁ。俺はあなたの夫として、あなたを一生愛し抜く」  彼が伝えてきた言葉は、何処までもまっすぐだった。  ……心臓を、掴まれてしまうほどに。
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