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それからはもうあっという間で。
カーティアの両親であるヴァイス侯爵夫妻は、王家の怒りを買うことを恐れ、カーティアを勘当した。
今後のカーティアのことは、全面的に王家に任せると声明も出した。
その結果、カーティアはオルフィーオの言った通り娼館送りの刑となり。
(……あぁ、どうしてこうなったの?)
今、娼館に馬車で運ばれている最中だ。
(普通、前世の記憶を思い出すのって、もっと早くない? こんな、こんな……)
断罪劇の最中に思い出すなんて、タイミングが悪すぎる。
馬車の窓から外の景色を見つめて、カーティアはぎゅっと唇をかみしめる。
視線を落とせば、今まで身に着けたこともないような質素なワンピースが視界に入った。
「……この、世界は」
ぼうっとしながら、そう呟く。すると、目の前にいた一人の男性がカーティアに視線を送ってくる。
眼鏡をかけた、いかにもなインテリ系の男性。彼は現在の宰相の息子であり、次期宰相だと名高い人物。
オルフィーオの側近であり、かつ攻略対象の一人。
「カーティア」
彼が、カーティアのことを呼ぶ。もう、『嬢』ともつけてもらえないのか。
心の中でそう思いつつ、カーティアは彼に視線を向けた。彼のその漆黒色の髪が、揺れる。
「……なんですの?」
端的にそう返せば、彼がふんっと鼻を鳴らした。
きっと、彼は忌々しい女が落ちぶれて嬉しいのだ。
「いや、キミのような女性が娼婦としてやっていけるのか、見ものだと思ってな」
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