1.前世の記憶を思い出したのは、断罪の最中でした

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 それからはもうあっという間で。  カーティアの両親であるヴァイス侯爵夫妻は、王家の怒りを買うことを恐れ、カーティアを勘当した。  今後のカーティアのことは、全面的に王家に任せると声明も出した。  その結果、カーティアはオルフィーオの言った通り娼館送りの刑となり。 (……あぁ、どうしてこうなったの?)  今、娼館に馬車で運ばれている最中だ。 (普通、前世の記憶を思い出すのって、もっと早くない? こんな、こんな……)  断罪劇の最中に思い出すなんて、タイミングが悪すぎる。  馬車の窓から外の景色を見つめて、カーティアはぎゅっと唇をかみしめる。  視線を落とせば、今まで身に着けたこともないような質素なワンピースが視界に入った。 「……この、世界は」  ぼうっとしながら、そう呟く。すると、目の前にいた一人の男性がカーティアに視線を送ってくる。  眼鏡をかけた、いかにもなインテリ系の男性。彼は現在の宰相の息子であり、次期宰相だと名高い人物。  オルフィーオの側近であり、かつ攻略対象の一人。 「カーティア」  彼が、カーティアのことを呼ぶ。もう、『嬢』ともつけてもらえないのか。  心の中でそう思いつつ、カーティアは彼に視線を向けた。彼のその漆黒色の髪が、揺れる。 「……なんですの?」  端的にそう返せば、彼がふんっと鼻を鳴らした。  きっと、彼は忌々しい女が落ちぶれて嬉しいのだ。 「いや、キミのような女性が娼婦としてやっていけるのか、見ものだと思ってな」
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