1.前世の記憶を思い出したのは、断罪の最中でした

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 その言葉は、明らかにカーティアを挑発している。以前のカーティアならば、その言葉に遠慮なく突っかかっただろう。  だけど、もうそんな気力もない。だから、カーティアは肩をすくめる。 「そうね。私も、とても不安だわ」  実際、それは真実だ。 (前世も、今回も。男性経験なんて、ないものね……)  カーティアの前世は、大学生だった。死因はよく覚えていないが、ろくなものじゃないだろう。趣味は乙女ゲームとライトノベルを読むこと。大学生になり、年齢制限がある乙女ゲームも嗜むようになり……この乙女ゲームを、プレイした。 (内容はおぼろげだけれど、カーティアのことだけは、覚えていたわ)  あの後記憶を必死に引っ張り出し、ゲーム内のカーティア・ヴァイスの末路を思い出した。  やはりカーティア・ヴァイスという令嬢は、乙女ゲーム内の悪役令嬢だった。ヒロインソフィアを虐め抜き、最終的に破滅する女。もちろん、ゲーム内では嫌な女として描かれている。  そんなカーティアの本来の末路は……確か、修道院行きだったはずだ。 (ただ、唯一違うのが)  このゲームには逆ハーレムルートがあり、それに関してのみカーティアの末路は違った。  それこそ……この娼館に落ちるというものだ。 (つまり、ソフィアは攻略対象である三人を、全員篭絡したということね)  カーティアは逆ハーレムルートはプレイしていない。知識があるのは、ネットで知識を手に入れたためだ。  そもそも、カーティアは逆ハーレムが好きじゃない。そのため、どの乙女ゲームも逆ハーレムルートはプレイしていないのだ。 (オルフィーオ殿下、その護衛。そして……目の前のこの男。みんな、ソフィアの虜なのね)  だから、この目の前の男性――名前をネーロはカーティアを忌々しいと睨みつけているのだろう。
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