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それは、容易に想像がついた。だって、自分は愛しのソフィアを虐めた悪女。嫌い憎む対象なのだから。
「それにしても、珍しいな」
不意に、ネーロが声を上げた。だから、カーティアは彼に視線を向ける。彼は、その目を真ん丸にしている。
「いつものカーティアならば、俺の言葉に逆上してくるだろうに」
彼が、当然のようにそう言ってくる。そりゃそうだ。今までのカーティア・ヴァイスならば……そうするに間違いないから。
「……そりゃ、そうじゃない」
なんといっても、自分は前世の記憶を思い出してしまったのだ。この世界が、ゲームの世界であるということも、知ってしまった。
「あのままの私じゃ、ろくな結末はたどらないものね」
もうすでにろくな結末をたどっていないということは、おいておいて。
まぁ、とにかく。
(少しでも娼館でいい印象を与えて、一刻も早く出ていきたい)
そんな、好きでもない男性と毎日身体を重ねるなんて――ごめんすぎる。
その後は、つつましく平民として暮らせばいい。そうだ。そうに決まっている――。
「さっさと、出て行かなくちゃ」
そう思って、カーティアはぎゅっと手のひらを握りしめた。
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