15人が本棚に入れています
本棚に追加
第3話:無謀な救出
「メアリ見て!こんなに!こんなに沢山のクルミが落ちているわ!」
嬉しそうにアンが言う。
「よろしゅうございましたね、アン様。さぁ、沢山拾って、お日様が真上にくるまでにお屋敷へ戻りましょう」
メアリが優しく2人を諭す。
「姉さま、今日は森がとても静かだわ・・」
キャロルが森の声に耳を傾けた。
シュタイン王国直属の魔導士で光と炎の使い手であるオーロラは引き取った2人の女児に魔術教育を受けさせていた。
『森の声を聴く』事は自然の息吹を感じ取る魔術の基本とされていた。
「そうかしら?・・・・そう言えば少し冷たい声がする・・・かしら?」
アンも森の声に耳を傾ける。
「・・・・・おかしいわっ!!」
バサッバサッ・・・・
アンが拾ったクルミを手からこぼし勢いよく立ち上がった。
「こんなにクルミが落ちているのにリスがいない!」
森の動物達は冬ごもりの前の準備、真っ最中のはずだ。それなのにリスが一匹もいない。メアリの胸に冷たい何かが広がった。
ブルルルル・・・・
ヒィヒィィン・・・・
同時に馬の嘶きが耳をついた。
メアリは辺りを見回す。山小屋までの道に誰もいないことを確認するとアンとキャロルへ叫んだ。
「アン様!キャロル様!山小屋へ急ぎお入り下さい!」
ビクリッ!
2人の女児は辺りに響いたメアリの声に驚く。メアリは2人の背中を押し山小屋へ急いだ。
『馬が近くまできている!それも大勢!』
西の屋敷へ戻る余裕はなかった。
最初のコメントを投稿しよう!