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パタンッ!
メアリはアンとキャロルを伴い、山小屋へ入ると静かに分厚い扉を閉めた。
山小屋の中はひんやりとした空気が漂っていた。2ヶ月前に建ちあがったばかりの山小屋内は真新しい木の香りが充満している。
部屋の中を見回し、変わりがないことを確かめる。メアリは2人に状況を説明すると身を隠す場所を示した。
「アン様、キャロル様、お声を立ててはいけません。大勢の馬が近くまで来ています。馬が通り過ぎるまでこちらで隠れていましょう」
メアリは2人を裏口の隠し扉のある部屋の物陰に誘った。
隠し扉の向こうには屋敷へ通じる隠し道がある。セルジオは万が一に備えて山小屋の裏口から屋敷へ通じる隠し道を作った。
『このまま素通りしてくれればよいのだけれど・・・・』
ドキンッ!ドキンッ!ドキンッ!
メアリは鼓動が大きく音を立て、速さを増すのを感じていた。それでもアンとキャロルに鼓動の高鳴りを気取られない様、深く静かに息を吐く。
「ヤギンス様、このような所に小屋があります」
ビクリッ!
メアリはくぐもって聞えた声に身体が硬くなるのを感じた。
『あぁ!神様!このまま見つかりません様に!』
メアリは2人の女児の肩をそっと寄せ息を飲んだ。小屋の外から数人の人と馬の気配がしていた。
「姉さま!恐い!」
キャロルが目に一杯の涙を溜め、アンに身体を寄せる。
「お静かに!声を立ててはなりません」
メアリはどうか外に声が聞こえていませんようにと強く願い、2人の肩を抱きよせた。
バンッッ!!
山小屋の扉が勢いよく開く音がした。
ビクリッ!
3人の騎士が山小屋の中へ入り様子を窺っている。
『あぁ!神様!』
メアリはアンとキャロルを更に引き寄せきつく抱きしめると目を閉じた。
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