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ドサツッ!!
何かが倒れる大きな音に山小屋の中へ入った3人の騎士が扉の外へ目を向けた。
ザワッザワッ!
突然、外が騒がしくなった。
「ここで何をしている!!」
聞覚えのある声がメアリの耳に入った。
『セルジオ様?』
3人の他に山小屋の様子を窺いに同行したのは5人。その内の1人を後ろ手に捕え、セルジオは強く言葉を発した。他の7人が剣に手をかける。
1人を後ろ手に捕えたセルジオは侵入してきた騎士の姿を確認する。
「その紋章はスキャラル国の者だな!我が地にて何をしている!!」
再び耳に入った声がセルジオのものだとメアリは確信した。
「何をしているもなにも、解りませぬか?御国シュタイン王国へ攻め入る途中の休息場所を探していたのですわ」
先鋒隊の隊長と思しき人物が答える。
「ほう、ここをセルジオ・ド・エステールが守る砦と知ってのことか?」
シュタイン王国西の砦。
エステール伯爵家の所領の一つであり、セルジオ騎士団が守護する西の森の北端に位置する砦だ。西の砦は隣国スキャラル国との国境が浅い最も危険な場所であった。
「セルジオ・ド・エステールだと?・・・・青き血が流れるコマンドールかっ!」
金色に輝く髪、深く青い瞳、ユリの紋章にサファイアをあしらったエステール伯爵家騎士団団長に代々伝わる剣を見やりヤギンスは続けた。
「我が名はヤギンス・バロッグ。スキャラル国ジークフリード隊の先鋒をつとめる者。セルジオ殿とは知らずに失礼をした。その者を放しては下さらぬか?」
ヤギンスを囲む6人はセルジオの名を聞くと後ずさった。
セルジオは騎士の後ろ手を捕えたまま山小屋の中へ目をやった。物陰からこっそりこちらの様子を窺うメアリと目が合う。
『無事か!間に合いよかった!』
セルジオはヤギンスらに気取られない様にメアリに目配せをした。
『逃げよ!2人を連れて裏口から屋敷へ向け走れ!』
メアリは頷き、裏口から出る機会をうかがう。
セルジオは小屋の中にいる3人の騎士を外へ出す様、促した。
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