第1話:プロローグ(前世の記憶の入口)

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はじめた仕事自体は経営企画と変わらない。 事業は永遠に継続していく事が理想であるが、時代に合わせて変容させていく事も経営者の役割の一つだ。 そんな経営者の構想をヒヤリングし、プロジェクト化する。そこから案件ごとのロードマップを作成し、行動計画とタスク管理ができる状態までをスタッフと共に創り上げる。 PDCAサイクルが回る仕組みを構築し、社内で運用できるまでを組み立てる。外部にいる戦略参謀と捉えて頂ければよいと思う。 個々の案件で対応できる戦略参謀の仕事は需要があるのだ。 (まるで傭兵(ようへい)だな) と思いつつも少しづつではあるが、事業として食べていけるまで丸3年を要した。 とにかく大勢の経営者に会う事から始めなければ何も生まれない。経営者や経営層が参加する異業種交流会に昼夜を問わず、毎日の様に足を運んだ。 起業したてのベンチャー経営者が通る道を私も同じ様に通った。 休日もなく、長時間働く事には慣れているものの3年程経った頃、どうにも体調が優れない。 「年齢のせいなのか?それともこれは更年期とよばれるものなのか?」 等と自問自答の日々を過ごしていた。 そんなある時、出席した異業種交流会で彼女と出会う。 (うん?どこかでお会いした事がある様な・・・・) 彼女をチラチラと見ていると 「あっ!今世でも会えましたね!来世で会おうと約束した事が果たせましたね!」 彼女は嬉しそうに歩み寄り私の両手を包んだ。 あまりに突然にまるで以前からの知り合いに久しぶりに会い、喜びが抑えられないと言わんばかりに向けられた『彼女の笑顔』に私はしばらく見惚(みほ)れ返事に(きゅう)する。 その頃『目に見えないモノやコト』は全くと言っていい程信じてはいなかったが、『輪廻転生(りんねてんしょう)』はあるのだろうとぼんやり思う事はあった。 彼女の言葉にそんな事を思い返していると包み込まれた両手から流れてくる言葉にできない感覚に戸惑いを覚える。 (この懐かしく、胸が熱くたぎるよう感覚はなんだ?) そこでハッと我に返った。 「初めましてでしょうか?どこかでお目に掛った事がある様に感じていました」 と思ったままを口にしていた。
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