第1話:プロローグ(前世の記憶の入口)

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名刺交換を済ませると(しばら)く話しをした。通常であれば職業柄『聞き役』に徹する。 当り障りのない世間話から入り、お互いの事業の事等をサラリと話し、何となく馬が合いそうだなと感じると話の内容が濃くなっていくといった具合だ。 だか、彼女は違った。本当に以前からの知人に思えてならず私生活や最近の体調の事まで『私』から話していた。 彼女は 「うん、うん、それで?」 と相づちをうち、体調の優れない原因と思われる事柄を語った。 仕事柄、経営トップとお会いする事が多い。どこの世界も『トップ』というものは背負うモノもコトも多いし、大きいものだ。 そう言う『目に見えないモノやコト』から何かしらの影響を受けるのだそうだ。 「お優しい方ですね。お優しいから影響を受けるのです」 彼女が言う。 「そうなんですか!優しい等と初めて言われました」 (数年前までサイボーグと呼ばれていたのだから) と相槌(あいづち)を打ちながらも心の中では全く信じられずにいる内に交流会は解散となった。 「また、機会があればお話ししたいですね」 彼女は目が離せなくなる程の満面の輝くを向ける。 「そうですね。また、どこかでお会いできたら先程の話を聞かせて下さい」 (!!!何を言っているのだ?私は!) 思いもよらず口から出た言葉に驚く。 「はい!是非!信じていらっしゃらないかと思っていました」 彼女はサラリと痛い所をつく。 「・・・・読まれていますね!いや、実は正直、今はまだ信じてはいないです」 私は苦笑いをする。 「ふふふ・・・・その内にご自身で思い出されてきますよ。そうなったらご連絡下さい」 彼女は意味深(いみしん)な言葉と共に会場を後にした。
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