第1話:プロローグ(前世の記憶の入口)

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何でも試してみたいと思う(たち)である。思うだけでも考えるだけでも始まらない。行動に移してこそ何かが見えてくると思っている。 彼女と出会ったその日から私は体調不良と事象を体系的にデータ化する事にした。眼に見えないモノもコトも数値化する事で顕在化(けんざいか)できると考えたからだ。 データ数が増えてくると (おやっ?これは・・・・あながち信じられない事ではないかもしれない) と思う様になる。 それからというもの体調が悪くなると彼女に連絡を入れた。 本来、体調の善し悪しを他者へ告知するなどあり得ない事だが、彼女の場合は体調不良の根源を取り除く『対処(浄化)』を得意としていたからだ。 ミラーニューロン効果なのか?元々人間が持ち合わせていた能力が目覚めたのかは解らない。 が、彼女と出会って半年程経つと行った事もない場所の景色、会った事もない人の顔、いつの時代なのかと思わせる服装で会話をする様子、名前等が突然脳裏に映像で浮かんでくる様になった。 そしてあの決着をつけた子供の頃に繰り返し見た夢を見る頻度が増した。 (働き過ぎか?もしや?) と思いながらも思い切って彼女に尋ねた。7歳の誕生日以来、誰にも話す事がなかった夢の話を。 彼女はあっさりと答えてくれた。 「あぁ!それはですね、前世の記憶です。思い出されてきましたね!しかも感情が残ったままになっている部分がありますから浄化してあげた方がよいですね。ひどくなると身体に痛みが出る事もあるのでその時は遠慮なく連絡して下さい」 「・・・・解りました」 (前世の記憶・・・・あの夢がそうなのか?) と不安に思いながらも何が起こっても受け入れようと覚悟をした。 それから数日後の真夜中。右肩から右腕に激痛が走り眼が覚めた。 「うぅぅぅぅ痛い、痛すぎて、吐き気がする!」 (何だろう?どこかでひねったか?) ベッドの中で右肩から右腕をさするが一向に痛みは治まらない。時間を追うごとに益々痛みが増す。 (まるで、右肩から切り落とされた様に痛い!動けない!) 夜明けまで痛みに悶絶(もんぜつ)し彼女へ連絡を入れた。 「右肩から右腕が切り落とされた様に痛むのだけれど・・・・」 もちろん、実際に切り落とされた事等ないのだが、他に言いようがない。 起き上がれずに横になったままスマホ越しに状況説明をする。 「あっ!切り落とされていますね!前世で切り落とされていますよ!戦っている真っ最中です」 と返答がくるのと同時に目の前の景色が変わった。 あの夢が、子供の頃から繰り返し見た夢が、より鮮明に目の前に(よみが)える。 小屋の中、重装備の鎧に金糸で縁取られた蒼いマントを身に纏い、青白く光る剣を手にしている。右肩を矢で射られ、右腕をバッサリ切り落とされる。 眼の前に重装備の騎士が多数見える。 「これは痛いですね!浄化します!」 彼女の声が遠のき身体がふわりと(ちゅう)に浮く感じがした。 次の瞬間、私の意識は別のどこかへ飛んでいた。
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