第2話:蘇る伝説の騎士の記憶

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メアリと微笑み合っているとガチャリと金属が重なるような音が聞こえた。 セルジオが重装備の鎧に金糸で縁取られた蒼いマントを纏い姿を現した。 肩までのびた金色に輝く髪、深く青い瞳で2人の女児へ微笑みを向ける。 「小さな2人の姫様の声が小鳥のさえずりのように聴こえてきたぞ。アン、キャロル、おはよう。この様に朝早くからいかがしたのだ?」 セルジオはメアリが差し出したバラの花が浮かぶカップを手に取る。そっと口元へ運びお茶をすすった。 メアリはアンとキャロルが座る長椅子の前に置かれたテーブルへもカップを置いた。 セルジオの後から同じ様に重装備の鎧に金糸で縁取られた蒼いマントを纏ったエリオスが姿を現した。 エリオス・ド・ローライド。 ローライド准男爵家第二子。セルジオ騎士団第一隊長だ。訓練施設でセルジオと共に育ち、騎士団入団後はセルジオから片時も離れず寝食を共にする腹心であった。セルジオと同じ金色に輝く髪、深く青い瞳を持つ。重装備の鎧と金糸で縁取られた蒼いマント、セルジオ騎士団のマントを身に付けている後姿はセルジオと見分けがつかない程に似通っていた。 メアリがエリオスへもお茶のカップを差し出し勧める。エリオスは首を左右に軽くふった。 「メアリ殿、私はこのままエステール伯爵家の城へ向かいます。お茶はご遠慮致します」 セルジオがお茶のカップを口元から離しエリオスへ顔を向ける。 「エリオス、先に行くのか?私と共にまいればよかろう?」 エリオスはセルジオへ困った顏を向けた。 「セルジオ様、エステールの居城でご当主フリードリヒ様へのご挨拶がございましょう。セルジオ様は直接、王都へ向かわれるのであればご当主様へのご挨拶は私がせねばなりません。団の者、総勢80名をエステールの城の広場で待機させて頂くのですから。お忘れではありますまい」 セルジオはふっと笑う。 「エリオス、頼りにしているぞ。そなたがおらねば私は立ち回ることができぬ。団の皆は食事は済ませたのか?」 セルジオはメアリが差し出した焼き菓子の端を少しだけかじるとソーサーの上に乗せた。 「はい、皆は小一時間程前にエステール伯爵家居城へ向け出立致しました。西の屋敷に残っておりますのは10騎馬の内、第二隊長ミハエルと私のみにございます。セルジオ様をお待ち致しておりましたが、私はミハエルと共に先にエステールの城へ向かいます」 そう答えるとエリオスはアンとキャロルへ微笑みを向けた。 「アン様、キャロル様、しばらくお目に掛かれなくなります。メアリ殿のお話しをよくよくお聴き下さいませ」 エリオスはセルジオへ向き直ると胸に左手をあて頭を下げた。 「それでは、セルジオ様、後ほど、王都騎士団総長とご同道されますのをエステール伯爵家居城にてお待ち致しております」 セルジオは静かに(うなず)いた。 「エリオス、頼んだぞ。団の皆へ心安んじて待つ様、伝えてくれ」 「はっ!」 エリオスはセルジオの居室を後にした。
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