4.凍てつく白に彩りを

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「あー、あれ、かわいかったですよね。そのお腹、私がぽんぽんって触りたくなっちゃいましたもん」 「俺もだよ~。でも、まだ二度しか会っていないおじちゃんだからなあ。無闇に触ったらダメかなと、必死に抑えてた。だっこしてぇー」  ふたりの感覚が揃って、あっというまに『拓人かわいい集』ができあがる勢いにヒートアップ。『それでさ、あの時の拓人、チョコレートが口について』、『ちいさな手でスプーンをぎゅって握って、お口に持っていく時とか』と、どの仕草も『かわいかった、かわいかった』と熱く語る帰り道になった。 「でも、なんですか。私と拓人君を重ねるだなんて。たまーに、私を子供の位置で見ているときありますよね」 「そこは、上官の娘さんとしてかな。将補の父親としての気持ちを察している時は、俺も親目線で、『俺が父親だったら、娘にこんな哀しい思いはさせたくない』とかね。そんな時、拓人と重なるときがある。っていうか、寿々花は、隊員ではないときは、お嬢ちゃんってかんじで子供とおなじような無垢な愛らしさがあるんだよ」  寡黙だった男が素直に惚気るとかなり強烈な熱風が吹き付けてくるようで、寿々花はいつも頬を熱くしている。 「もう~子供じゃないです、アラサーですからねっ」 「あはは。拓人とおなじ、一生懸命に料理をしている時、寿々花もくちびるが尖っているよ」 「うそ~! うそでしょ、そんな顔していないです! うそだって言って」 「だから、それがかわいんだって。拓人みたいに」
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