4.凍てつく白に彩りを

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 ほどよく綺麗に鍛え上げている一尉の逞しい裸体が寿々花の脳内に現れる。あったかく眠ろうね、じゃないよ。そこ一尉の場合『寿々花が気を失うまで手を緩めない』って、なんでベッドでも獰猛な目つきになるのと、寿々花は毎回ヘトヘトになる記憶しかない。ああ、そうか。これが一尉が言っていた『甘く貪る』か……と痛感したものだった。  彼と『一緒に眠る』というといまのところ『あったかい』なんて生ぬるいものじゃなくて、『燃え上がる』といいたくなるほど熱烈なものだった。  そんなことがすぐに頭の浮かぶようになった己の邪な思考にも恥ずかしくなる。こんな自分になったこと知られたくない、初めての愛欲を覚えてきた女の頭の中を知られたくない。 「寿々花いま『私の時って裸よね』――と思って黙っちゃったのかな」  わーー! なんなのこの一尉!!  頬を染めてギョッとして見上げた寿々花を見ても、将馬は楽しそうに笑い出す。 「もう~、一尉が変な比べ方するからじゃないですかっ」 「あ、また一尉に戻っちゃったな。二人きりの時は階級は禁止だって何度言えば」 「自衛官だから、根底に残っちゃうの! どーーしてもそこ解除できない訓練されちゃってるでしょ。それに一尉ったら、最初からすごい威圧感を私に向けて放っていたくせに」 「寿々花だけじゃないよ。部隊では誰にでも。遊撃レンジャーの教官にならないかという打診も来ているからね。上官オーラの訓練中とも言えるな」  これは本当の話で、まだ内々の案件になっている。
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