4.凍てつく白に彩りを

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「旅団長に睨まれたらお終いだからな~。普段はにっこり穏和そうなお顔をしているけれど、隊員達のやること鋭く細かく見ているよ。この前も、帰りの公務車で、正面玄関を通過するときに、いきなり『けしからん!!』と車を止めて、門警備の隊員を叱りつけたんだよ。もう怒られた隊員の直属の上官まで震え上がっていてさ。実は俺も『恐ろしい……』と震え上がっていたんだけれど、内緒な」  父が陸将補である時の厳しい姿を聞かされ、寿々花も驚かされる。しかも館野一尉ほどの冷徹な男まで震え上がらせるって凄いなと……。 「でも、それは。陸将補になったからこそ、常に気を引き締めているということだよ。偉くなって楽になった部分もあるだろうけれど、何百万人という管轄地域にいる国民の生活と何千人という隊員の生命を常に背負っているからだよ。門の警備は常に本番体勢、怠慢を見逃してはいけないところだ。その目ざとさも、目の良さとして持っていなくちゃいけないんだと、俺も肝に銘じたほど」  そうなんだ……。お父さんの使命だもんね……。そんな話を神妙に聞いていたのに、まだ制服を着たままの彼がはたと我に返った顔になった。 「しまった。うっかり仕事の話をしているな。はあ、俺って……。せっかく新しく結成するファミリーで休暇を過ごそうと楽しい話をしていたのに。なんで、すぐ仕事の話題に……」 「お互いに自衛官だからでしょう。しかも、私はあなたの上官の娘だし……。私は、父の旅団長としての姿が聞けてよかったと思ってるよ」  カーテンを閉め終わり、寿々花は制服の外套を脱いで、ソファーの背に置いた。  その途端だった。おなじく外套を脱いだばかりの彼に正面から抱きしめられていた。
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