5.この手を握って、離さない

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 雪の季節に移転してきたため、いきなり雪に囲まれる新生活となった。初めての雪国暮らしにあたふたしていた岳人パパと、おっかなびっくり、でも驚きいっぱいでわくわく楽しむ拓人だったが、将馬と寿々花、寿々花の両親の力添えで、なんとか早いうちに馴染むことができた。  素早い決断と話し合いを済ませていた『父親組』の『親権申し立て』も弁護士を通じて早々に決着がついた。  鳴沢の両親が一度だけ、札幌まで将馬に会いに来たが、本気になった将馬の強固な姿勢に太刀打ちできずに退散。子育ての環境が父親側で良好に整ったこと、逆にいままで親権があった母親側は悪化していることが決め手となった。  伊藤家が協力したことも大きかった。そして、親権を取る実父の将馬が結婚予定であること、婚約者である寿々花の了承が取れていること、館野家の両親、婚約者伊藤家の両親も受け入れ協力が整っていること。親権を持つ父親が、育ての父親に監護権を希望していること。育ての父親がそれを了承していること。育ての父親の収入に合わせ、三人の自衛官が揃っていて経済的にも安定していること。信用的にも、母親側より有利となった。  自分一人ではなにもできない彼女は、今回も一度も声を聞くこともなく姿を現さず。面倒なことには背を向け逃げて、両親と弁護士任せで親権を放棄した。それを鳴沢の両親は止められずに受け入れたようだった。接近禁止にしたのは彼女だけなので、鳴沢の祖父母には『条件付き』で孫に面会できるということでも話が落ち着いた。  拓人が可愛くても、娘を優先する家庭しか作れなかった鳴沢の両親。なるべくしてなった結末。彼らが自ら引き入れた結果だと寿々花は思っている。  自分を愛でてくれる新しい環境で、拓人は毎日明るい笑顔で過ごしている。
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