6.その微笑みを忘れないで

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 重ねるごとに、寿々花の気持ちも高まる。彼の妻になって、彼の大事なものを守っていくことを。甘く貪るだけで終わらせない。ずっと繋がっていられるように守るのは寿々花の役目にすると――。  熱く貪った翌日は遅い朝を迎えるのも恒例。  寿々花よりも気怠い様子で遅く起きるのも将馬のほうだった。  それでも寿々花が揃えた休日の朝食の食卓へとぼうっとした様子でついてくれる。  そんな気を抜きっぱなしの一尉を見られるのも私だけだなあと、寿々花は密かににやついてしまいそうになるが、毎週必死に堪えていた。  寿々花が淹れたコーヒーを飲み始めると、徐々に彼が大人の彼に戻っていく。 「明日は拓人君と滝野すずらん公園に行くんだよね」 「うん。気候もよくなってきたからな。あそこならめいっぱい遊べるだろう」 「また陸自レンジャー根性でムキになって遊具を制覇しないように。たっ君ペースでお願いしますね。秘密のお父さん」 「はい。つい、頑張ってしまいます。気をつけます」  ドライブもレジャーも、いまは岳人パパと一緒におでかけが当たり前になっている。  岳人パパも初めての北海道生活で張り切っているので、男二人が張り切りすぎたら、寿々花がブレーキをかけるようになっていた。 「ところで。そろそろ寿々花と結婚式の準備をしようかと思っているから、式場とか希望があったら決めておいてくれな」 「ひとつ。もう決めていることがあります。一尉」 「……階級言うようなことなのか?」 「一尉のご子息に、リングボーイをしてほしいなって」  リングボーイ。ピンとこない様子の彼に、寿々花はスマートフォンで『リングボーイ』の説明記事と画像を見せた。 「挙式の時に拓人にリングを持ってこさせるってこと!?」
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