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いまはパパと、パパの親友とその奥さんのすずちゃん。
この三人で拓人を育てている。
拓人にとっては、いつもこの三人がいるのが当たり前なのだ。
「ふう、これで将馬さんと拓人のリリートレイン乗車も残せた」
さきに譲ってくれたから、今回こそは、本当の父子である二人の姿を残せてほっとしているようだった。
カメラの画像を確認している彼と一緒に、ルピナスの道沿いを寿々花も歩く。
「お母さん、お元気ですか」
「ああ、うん。元気だよ。また北海道に遊びにいきたいと、次の計画を練っているみたいだよ」
「いつでも来てくださいと伝えてね。たっくんにとっても、お祖母ちゃんでもあるから。父と母にもそう強く言われているの。またお母さんと一緒に、ドライブに行こうね」
「うちの母にまで気を遣ってくれて……。ありがとうね。寿々花ちゃん」
「……お母さんも、一生懸命、子育てに協力してくれたと聞いているから。たっくんがここにくるまで素直でかわいい子でいられたのは、岳人パパとお祖母ちゃまのおかげなんだから」
岳人がちょっと憂う眼差しになり、緩い微笑みのまま黙ってしまった。
彼の手元にあるカメラに、今日撮影したふたりの父親と息子と、寿々花の画像が繰り返し表示されている。
「でも。あんなに溌剌と弾けるような元気な男児という顔つきになったのは、やっぱりここに来てからだよ。母親の顔色を窺うことをしなくてよくなったからね」
彼の表情が強ばり、最後の語気は言い捨てるように強かった。
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