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「今日もここにあいつがいたら、スマホ片手に花と自撮りだけをして、ひとりで日陰がある場所に座り込んで動かなくて。拓人の相手をするのは鳴沢の義父と義母、それと俺だっただろうしね。虫がいるのは嫌だ。靴が汚れる。はやくレストランに行きましょう……」
そこで岳人パパが我に返った。すぐに寿々花に取り繕う笑みを見せた。
「あ、あんな女の話は二度としないと思っていたのに。ごめん……寿々花ちゃん」
「気にしないで。岳人パパのことだから、ずっと内側に溜めて、拓人のためだけに受け流してきたことばかりでしょう。どうしてかな……。血の繋がりがあって自分がお腹を痛めて産んだ子であっても、母親になれない人がいる。ほんとうにいるんだなって思った。なのに血の繋がりが無くても、子供を愛おしく思える人もいる。岳人パパのような男性がいてくれたことがきっと、たっくんにとっても、手に届かなくてもどかしい思いをして案じていた将馬さんにも救いだったんだと思ってるよ、私。岳人パパは救いだったの」
「すずちゃん……」
そんな彼がいきなり寿々花にカメラのレンズを向けて、カシャッとワンショット、撮影をした。
「え、え、なんでいきなり!」
「あはは。俺たち男三人の真ん中にいる女神。すずちゃんだからね。いまの優しい顔も撮っておこうと思ってね~」
「えーー! 女神とかやめて!! そんなんじゃないしっ。それにいまの絶対に変な顔!!」
大丈夫だってと岳人パパが笑いながらカメラの画像を見せてくれる。
意外と自分が綺麗に写っていてびっくりした。まさかの奇跡の一枚!?
でもそんな寿々花の横顔の写真を見て、また岳人パパが静かに呟く。
「これから、拓人の母親になっていくだろうけれど。よろしくな」
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