2.すずちゃんに相談

4/5

1265人が本棚に入れています
本棚に追加
/196ページ
「……岳人パパだって、ずっとパパでしょう」 「もちろん。拓人の結婚式までがんばる決意だよ」  明るい笑顔なのに、ちょっと憂いを秘めている気がして、寿々花は時々不安になる。いつかどこかに行ってしまわないか。不安になる。  この男性にもしあわせになってほしい。  いまは結婚は懲り懲り女も怖いと言っているけれど、この人なら素敵な女性に出会えるはずと寿々花は思う。  その時に、拓人も一緒に祝福できるような環境にも整えておきたい。  いつか自然に拓人が将馬を実の父と思え、育てのパパのこともそばに、パパのしあわせを受けいられるようにしておきたい。役割が終わったからと、離れていってほしくないから。    ルピナスが咲く線路沿いを辿り、駅舎が見えてくる。一周が1.2キロメートルの走行を終えて到着したリリートレインから、乗客が次々に降りている様子も見えた。  駅舎から拓人が出てきて、ガーデンから歩いてきたパパとすずちゃんを見つけて駆けてくる。 「パパ、写真とれた?」 「撮れたよ。ほら」  パパのカメラを覗いて『三佐』とばっちり写っていることを確認した拓人が笑顔になる。 「すずちゃん。ソフトクリーム、いま、三佐が買ってくれるって。いこう。僕、バニラといちごがぐるぐるなってるやつ」 「おいしそう。じゃあ、すずちゃんもそれにする」 「おそろいだね」  拓人が寿々花の手を握った。その手を拓人が一生懸命に引っ張ってくれる。  二人のパパと、すずちゃんと、たっくん。いま三人の大人と子供が常に一緒にいるのは自然なことだった。
/196ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1265人が本棚に入れています
本棚に追加