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そんな堂島陸曹も涙もろいかもしれない。『事情を知っている数少ないひとり』だったため、結婚式では彼女ももらい泣きしていた。寿々花の同僚として招待したほかの音楽隊女子たちが『え、堂島さんまで泣いている。もらい泣き?』と唖然としていたシーンもあったのだ。
ただ館野三佐に子供がいることはそれとなく噂が流れていたので、拓人と将馬の関係を訝しむ様子も伝わってくるように。ただし『最近、一緒にいるようになったあの男の子。実は……。でも三佐の親友をパパと言ってるし確信できない。旅団長と関係がある人たちだし触れまい』という空気に収まっていた。
父の日のプレゼントへと話を戻す。
「お父さんの似顔絵って、幼稚園でクレヨンで描いたようなものですよね」
「そうそう。あ、……でもそれって、拓人君はもうすでに岳人パパにやっているかもしれないね。小学生だともうクレヨンで似顔絵はあまりしないかな。女の子だとまだやりそうだけど、拓人君はどうかな~。オリガミとかでちょっとしたものを作ってプレゼントしてくれても、親は嬉しいものだけれどね。レンジャーバッジ的なものを作ってもいいんじゃないの」
「それいいですね」
「あと、ママと一緒に作ったごはんという手もあるわよ。寿々花ちゃんと一緒の手料理でもいいんじゃないかな」
「なるほど!」
いろいろなヒントをもらって、拓人と話し合うことにした。
あまり日にちがない。学校から帰ってきているだろう時間に、近所に住まう岳人パパのマンションへと訪ねる。
二人用のお惣菜などをたまに持っていくので、それを名目に出向いた。
「おー、すずちゃんの惣菜。いつもありがとう。助かるよ!」
「遥ママとおなじ味がするポテサラがあるっ」
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