3.父の日なにする?

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 父親と親友の妻との間で話は決まったので、今度は拓人へと寿々花は確認をする。 「たっくん。パパ、お仕事で忙しいみたいだから、今日は三佐の家でごはんをしてお風呂に入ろうか」 「え、う、うん」  ほら。拓人も。『夜はパパといたい。僕のおうちはここだから』と決まっているのだ。 「眠くなっても、三佐がおうちまで車で送ってくれるよ」 「パパ、忙しいの?」  岳人が申し訳なさそうに、拓人の頭を撫でる。 「うん。けっこうギリギリなんだ。ごはんの支度ができなくてごめん」 「わかった。すずちゃんと一緒に行ってくる」 「夜遅くなるけど、それまでにパパの仕事、終わるからな」 「うん」  揺るがない父と息子の絆が、血縁でもないのにできあがっている。  ここまで岳人が本気でなさぬ仲の子供と向き合ってくれたからこその絆。実父が遠く離れていても、実の母親と祖父母が身勝手でも、義理の父親と壊れないほどの関係があるからこそ、拓人はいい子に育ったのだ。  この男性のこの心意気がなければ、ここに素直な拓人はいない。  それ故に、すぐにこの男性から拓人は奪えないし、拓人からもパパを奪えない。それをよく理解しているのも、大事に大事に慎重にしているのも実父の将馬自身だった。  だから寿々花もそれを無碍にしないよう、慎重に努めている。  すでに寿々花は制服から私服に着替えていたので、そのまま拓人の手を引いて、真駒内公園へと散歩へ誘う。その後近所のスーパーで買い物。パパに届けて、館野家となる三佐と寿々花の新婚さんの住まいに向かうことに。  真駒内公園にふわふわとしたポプラの綿毛が舞い、黄昏に染まっていた。それを拓人が捕まえようと追いかけていく。
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