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寿々花側に用件があって拓人に会いに来たので、小さな彼をベンチに座らせて、途中で買ってあげたジュースを差し出して休ませる。
夕暮れのベンチにふたり……。
なんか二年前の初夏を思い出す風景だった。
あの時はまだ一尉は凍った横顔と眼差しを見せていた。そんなことを思い出す。
いまはその男性にそっくりな顔つきをしたかわいい男の子が寿々花の隣にいる。小さな手でペットボトルのキャップを一生懸命開けようと頑張っていた。前だったらすぐに手伝うところだったが、ちょっと前に『ギブするまで見守ってあげて』と岳人パパに言われたばかりだから、黙って見ている。
開けられない日もあれば、諦めちゃう日もある。
今日はなんだか頑張ってる。そしてきゅっと開けた。嬉しそうな笑顔をひとりで浮かべたので、寿々花も隣でひっそりと微笑むことができた。
「たっくん。このまえ、父の日にパパだけじゃなくて、三佐にもなにかプレゼントしいたいと言っていたでしょう。なににしようか」
ごきゅごきゅとジュースを飲んでいる拓人に、寿々花から提案してみる。
「三佐の似顔絵とか? それとも、オリガミでレンジャーのバッジみたいなのをつくる?」
「うーん……」
拓人的にはピンと来ないらしい。
「じゃあ、すずちゃんとお料理をしてご馳走にしてみる?」
今度は拓人もピコンとなにかが閃いたような顔をみせた。おめめが大きく見開く。
「教官におしえてもらって、芹菜ママに作り方おそわる」
はい? 唐突な提案が小学一年生から飛び出してきて寿々花は眉をひそめた。
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