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『教官』は、先日ご自宅に招いてくれた将馬のレンジャー恩師のことで、『芹菜ママ』は教官さんの娘さんが結婚したお婿さんのお母さんのこと、お姑さんだった。『素敵な暮らし』と名がつきそうな雑誌並のセンスをお持ちの女性だ。とっても素敵な住まいに整えていて、寿々花もすっごく素敵と憧れたご自宅をつくりだしている。そのお母さんの手料理も素晴らしく、拓人のために焼いてくれたケーキも絶品だった。
いったいなにを教わるのか?
「ケーキ焼いて、渡すんだ」
「ケーキ!?」
一緒に料理から『ケーキ』を作ることを思いついたらしい。
だが寿々花は焦る。そして拓人はそこもきちんとわかっていた。
「だって。すずちゃん、ケーキ焼けないよね」
「……や、焼けません。焼いたことありません」
「遥ママも、もうずっと作ってないんだって」
「あー、そうだね。すずちゃんが大人になっちゃったからかな。よっ君のお世話もあるしね」
「このまえ、バーベキューでおじゃましたときの、芹菜ママのケーキ、素敵だったし、おいしかった。そこに、チヌークのクッキーを飾りにのせてたでしょ。あれのレンジャーバッジのやつを作るんだ。レンジャーのバッジは、教官が知ってるでしょ。それで、また遥ママにピアノ弾いてもらって、赤いスイートピーを唄ってあげるんだ。結婚式で唄ってあげたら三佐すっごい喜んでくれたし、いまはあの唄ばっかり車で聴いてるじゃん」
それは拓人が結婚式で唄ってくれたからだよ~。
ただそれだけの思い出で、気に入ったお父さんの気持ちで聴いてるんだよ~。
男の子から次から次へと出てくる提案に寿々花はいちいちギョッとしながら、あたふたするしかできない状態に。
「そそそ、そうなんだ。そんなことをたっくんは考えていたんだね」
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