3.冬季遊撃レンジャー

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 寿々花が戸惑っていると、そのうちに彼からサッと外して背を向けた。車両の後ろをまわり後部座席の右側ドアへと向かっていく。彼もさっと乗り込むと、運転手の若い隊員も乗り込んだ。  セダン車が発進をすると、父は軽く手をふり、向こう側にいる彼は会釈をしてくれた。  母と揃って、ほっとひと息ついてしまう。  すごい威圧感があったと寿々花は思うのだが、母はきっと、夫の新しい部下にきちんと妻として挨拶を終えられた緊張から解けたからなのだろう。 「まあ。会いたいと思っていた方にさっそく会えてびっくりよ。そう、館野さんだったのね。よっ君を捕まえてくれたのは」 「私もびっくりしたんだから。あ、でも、納得。自衛官で鍛えられている人だったんだ。動作も綺麗でキビキビしていたもの」  すると母が妙に自慢げに胸を張ったのだ。 「そりゃあ、ね。お父さんの副官になった館野さん。夏季レンジャーも、ここ真駒内で行っている冬季レンジャー『遊撃』も取得している強者よ。スキーがすごく上手いんですって。身体能力抜群で判断力もあるらしくて、将来有望なんですって」 「そ、そうなんだ」  過酷なレンジャー訓練を、夏季と冬季両方修了していると聞けば、自衛官ならば確かに『うわ、強者!』と畏怖するほどのこと。だから寿々花も驚きおののく。母はまだまだ興奮気味に続ける。 「夏季、冬季と両方のレンジャー資格を持っているうえに、富士学校の幹部レンジャーも修了済み。だから制服の胸につけていたレンジャー徽章(きしょう)が金色だったでしょ。空挺レンジャーも取れそうよね。お父さんが館野ならやれそうとお墨付きみたいだし。ヨキ君をすばやく保護してくれたのも納得!」
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