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そこで待機していた神楽教官が拓人と約束していたものをテーブルへと出してくれた。
金色の幹部レンジャーバッジと、冬季遊撃レンジャーの雪山バッジだった。
「将馬おじちゃんとおなじだ! 金色と雪山のバッジふたつ。やっぱり教官も持ってた!!」
「そりゃそうよ。三佐の教官だったんだもの」
将馬が毎日胸に付けているバッジなので寿々花も拓人も見慣れてはいるが、同じ物をひょいと出してくる人もそうそうはいない。それが逆に拓人は『もっとすごい人がいる』と驚きのようで、寿々花は笑った。
「これ、ふたつとも持ってる人ってすごいんでしょ」
「うん。自衛隊の中でもこれを付けている隊員さんを見ると『うわー、強者!』って驚いちゃうの」
「教官になるのもすごいんでしょ。教官すごい!!」
「いやいや、もう~。だいぶ昔の話だよ」
駐屯地にいたらクールな顔つきで威厳を保っていただろうに、神楽教官はいつもの愛嬌で謙遜している。
それでも拓人が『すごい、すごい』と鼻息荒く神楽教官へ尊敬の眼差しをまっすぐに向けてくるので、さすがの教官も照れてばかりいた。
「じゃあ、たっくん。まずはクッキーのデザインを決めましょうね」
「えっと、あの。芹菜ママ……。三佐のだけじゃなくて……パパのケーキもいいかな」
「もちろんよ。岳人パパはなにが好きなのかしら」
「ジーンズがすき。古いのさがして集めてるの。あと、抹茶のクリームが好き」
「わかりました。三佐とお揃いにして、クリームを変えて、ジーンズのクッキーも乗せましょうね」
急なお願いをした拓人に寿々花はぎょっとしたが、芹菜ママはおおらかな微笑みですっと受け入れてくれる。
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