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いつもならここですぐに夫と岳人パパへと動画を送信しているところだが、今日は我慢我慢。あとで、どのようにして拓人が頑張って作ったかを、ふたりのパパに見てもらう。
拓人の小さな手が、雪山のバッジを模した形へとクッキー生地を整えていく。パパのジーパンも。
クッキーをオーブンで焼いたら、次は芹菜ママのロールケーキ生地もオーブンにセット。
クッキーの熱がとれたら、色つきアイシングで、雪山バッジについている三つの赤丸と桜の花を雪山のてっぺんに、パパのジーパンもかっこよく色づけして飾り付けする予定。
「焼き上がるまでお茶にしましょうか」
芹菜ママが優雅にティーポットで紅茶を煎れる準備を始める。
せっせと動いていた拓人もひと息、ほっとした顔を見せる。
寿々花と一緒にダイニングテーブルに座ったところで、神楽教官がひとつのアルバムを持ってきて、拓人の隣に座った。
「これ、教官が最後に隊員と訓練をした時の写真だよ」
開いた最初のページから、小雪にけぶる真っ白な風景。ニセコの山中だった。
「冬のレンジャー訓練の写真?」
「そう。この訓練の時に、館野がいたんだ」
拓人もなんの写真かわかったようで身を乗り出した。
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