6.君たちの微笑みのために

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『すずちゃんなんで泣いてるの』と、拓人がきょとんとした顔で寿々花の顔を覗き込む。  しんみりしたテーブルに優しい空気を運んできたのも、芹菜ママだった。 「すずちゃん、将馬さんが雪の中、頑張っている姿に感動したのよね。さあ、お茶しましょう」 「はい。拓人君が好きな『いちごチョコサンドさくさくパイ』。ユズがお店から持ってきてくれたよ」  芹菜ママが素敵なティーカップに紅茶を煎れてくれる。広海さんからも、荻野製菓のお菓子の盛り合わせをだしてくれる。拓人はもうそちらに気が向いたようでウキウキとお菓子を食べ始めた。  寿々花もそれに釣られて、涙をふいて、拓人と一緒にお茶を楽しんだ。 「私、娘がほしかったの。だから、かわいいユズちゃんがお嫁さんになってくれて嬉しかったのよ。でも……。たっくんを見ていると、やっぱり男の子もかわいいわね~。広海がちいさい時を思い出しちゃう」 「母さんったら。拓人君を見るたびに、俺が小さい時を思い出すって言うのやめてくれよ。もういい年齢の中年になろうかとしているんだからさ」 「いや~。私も娘ふたりだったから、ちいさな男の子がこうして乗り物や自衛隊に興味をもってくれると嬉しいもんですね~」  こちらのお宅でも、拓人を中心にして、ママと教官と息子さんが和気藹々と目元を緩めて和やかな空気になっていく。  楽しいお茶の時間を過ごしていると、クッキーも焼き冷ましが完了し、ケーキ生地も焼き上がった。  芹菜ママと一緒にクリームを塗って、拓人も真剣な顔で生地をくるっと丸める。ホールのケーキよりもくるっと上手に巻けたことが嬉しいようで、できたできたと寿々花に向かって拓人ははしゃいだ姿を見せてくれる。その様子ももちろん動画撮影済み。
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