6.君たちの微笑みのために

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 芹菜ママは本気のようで『絶対よ。またバーベキューをしましょう』と、嬉しそうな笑みを見せてくれた。  息子の広海さんと神楽教官にも御礼を述べて、ケーキを大事に後部座席にのせ、寿々花と拓人は伊藤の家へと急いだ。 「パパたち帰って来ちゃうかな」 「そうね。そろそろかな。急ごう」 「すずちゃん。箱を開けるまで内緒だよ」 「もちろん」  運転をしながら寿々花はフロントミラーを見る。そこには後部座席のチャイルドシートに座っている拓人が映っていて目が合った。ふたりでにっこりと笑い合う。 「帰ったらクラリネットの準備もしないと……」 「ピアノのことも内緒だよ」 「もちろん、もちろん。たっくんも遥ママと頑張ってよ」 「こっそり練習したから大丈夫だもん」  もうひとつのミッションも密かに準備済み。  日が長くなった北国の初夏。大きな川沿いを走り抜け、真駒内にある実家へと寿々花と拓人は急いだ。
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