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男としてのプライドも芽生え始めたこのごろ。いつまでも保育園児のような扱いするなとばかりに拓人が憤った。いやいやたっくん、そこでムキになるのは逆効果! 三佐が違う方向へ詰問を変えちゃうよと寿々花も焦る。
「だったら。それより困ったことがあったとか? パパに心配かけたくないとか、あったのかな」
もうもう鋭いな。でも和気藹々としていたパパチームの空気が崩れ、岳人パパが心配そうな表情に変わってしまった。
こんなところ。拓人を心配する父心とわかっていても、三佐は生真面目すぎるなあと、寿々花は密かにため息をついてしまった。
「たっくん。もう乾杯もしているし、お父さんたちお寿司も食べはじめちゃったし、いいんじゃないかな」
寿々花が話しかけると、拓人も出しどころを迷っていたのか『もういいね』とこっくりと頷き返してきた。
寿々花は冷蔵庫を開けて、細長い箱を取り出す。ふたつの箱は拓人に手渡し、彼が慎重に小さな手で運んで、パパとおじちゃんの目の前にそれぞれ置いた。
「父の日の、ぼくからのプレゼントだよ」
父親ふたりが一緒に驚き、目を見開いたまま静止した。しばらくすると、お互いの顔を見合わせ、揃って拓人を見つめた。
『ふたつ』あることがどういうことか先に気がついたのも、岳人パパだった。
「拓人。ふたつあるけれど……。ひとつは、三佐にだよな」
「うん。パパとおなじぐらい、御礼をしたいおじちゃんだから」
「それって。拓人が考えてくれたことなのか。それともすずちゃんと遥ママが……?」
岳人が寿々花と母の遥へと視線をむけた。拓人にそう考えるような提案をしたのかという戸惑いの目線だった。
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