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若い父親ふたりだけが知らず、周りの家族に知人が一丸になって拓人のプレゼント作戦に協力してくれ、そして拓人が考えた気持ちがそこにあるケーキそのものだとやっと理解したようだった。
「パパはジーンズが大好きで抹茶クリームが好きだから、芹菜ママがクリームに抹茶いれてくれたの。草むらみたいなクリームにしたのぼくだよ。三佐のバッジも僕が焼いて、広海君がチョコレートを削ったら雪みたいになるよって、飾ってくれた。それからね……、三佐が雪のレンジャー訓練した時の写真も見せてもらった」
それを聞いた将馬が驚き、目を見開いた。
「俺が雪中訓練をした時の……?」
「うん。雪が降っている時に何かがあったら、すぐに三佐が守りに行くんだって教えてくれた。戦争をしないために、追い払うため。このバッジを持っている隊員は、雪の中で防衛するお仕事が出来る証明だって言っていた。ぼく、三佐に戦争に行って欲しくない。でも、三佐は戦争にならないように護って帰ってくるんだよね。教官が、将馬おじちゃんが頑張れるように応援してくれって。ぼくとすずちゃんとパパが、普通に暮らせるよう守るためだって教えてくれた。三佐、ぜったいに帰ってきて」
パパとおなじ、お父さんとおなじ。そう思ってくれただけでも将馬には思わぬ感激だっただろうに……。まさか、自衛官の父親がどのようなものかを神楽教官が息子に教えてくれていただなんて……。どんな気持ちを胸に秘めて、自衛官として精進をしているのか。息子に教えてくれ、在りし日の姿を見せてくれていただなんて。そんな驚きを彼が見せている。
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