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あっという間に子供らしいおねだり顔になったので、そこで涙目のパパと三佐が『おいおい』と笑い出す。
「ま、いいか。いつもならちゃんと、ごはんをしっかり食べた後と言いたいけれど。パパもすぐに食べたいな。いいよね。将馬さんも、すずちゃんもすぐ食べたいでしょ」
「そうね。今日は特別としましょうか。ね、将馬さん」
彼も涙を拭って笑顔になる。
「そうだな。三佐も、いますぐに食べたい」
今日はきちんとごはんはそっちのけ。好きなように食べようということになった。
父も身を乗り出して『このクッキーバッジはなかなかだぞ』とスマートフォンで拓人が作ったケーキふたつを撮影しはじめる。
寿々花がケーキナイフを白いロールケーキに入れようとしたのだが。
「うわー、やっぱり寿々花待ってくれ。これ冷凍してどれぐらい保つ? やっぱり壊したくない。このまま保存しておきたい」
「いえ、三佐。無理ですから。きちんと写真に残して、おいしく食べなくちゃ。ねえ、たっくん」
「ぼく、白いケーキと抹茶ケーキ、いっしょに食べたい」
「えええ。そんな、いまこのケーキを目にしたばっかりなんだぞ。すぐに壊して消えるだなんて……もったいない。ずっとそばに置いておきたい」
将馬がロールケーキを腕に囲ってしまい、なかなかケーキナイフを入れさせてくれない。
「三佐、来年もつくるよ。ぼく」
「……そ、そうか……。いや、初めてのプレゼントはこれしかないからな」
「おい。館野、おいしく食べるのが贈り主への最大の御礼だぞ」
「そうですよ。三佐。陸将補からのお言葉ですよ」
「俺、いま、プライベートなんで。上官の言葉が聞こえません」
「館野が……、逆らった……!」
「三佐、ぼくと食べよう。パパと一緒に」
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