8.君は母親

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「唄もいいけれど、拓人がピアノを弾けるだなんて驚いた。ほんとうに遥ママと寿々花の音大卒親子の間にいても、ぜんぜん違和感なかったし、ピアノの連弾が出来るなんて凄いな!! またこの曲を聴くたびに、拓人からの気持ちを思い出せるよ。ありがとうな」  おじちゃんにも喜んでもらえて、拓人も満面の笑み。  これにてミッション終了、拓人のプレゼントがお父さんふたりに届いて、喜んでもらえて、手伝った寿々花も感無量だった。  拓人もパパをみて、おじちゃんをみて、二人の嬉しそうな笑顔に満足そうだった。  だがここでまた拓人が思わぬことを言いだした。 「パパ、あのね……。ぼく、ピアノ習いたい。遥ママみたいにピアノ弾けるようになりたい」  またもや、お父さんふたりが『え』と驚きの顔を揃えた。  いや。寿々花も『え!?』だった。 「唄で喜んでもらえたりするの、ぼくもすごく嬉しかった。楽しかった。結婚式の拍手、凄かった。将馬おじちゃんが、唄った曲を好きになってくれて嬉しかった。きっとすずちゃんのお仕事ってそういうことだよね。ぼくも、音楽でよろこばせたい」  え、えええ? パパでもなく、秘密のお父さんでもなく……。本来はまったく血の繋がりもない伊藤家の影響を受けちゃった!?  父の一憲も、母の遥も仰天していた。 ---♬-♪--♫--  楽しい時間はあっという間。実家での父の日パーティーも終わり、寿々花は将馬と一緒に自宅マンションに帰宅する。  初夏の風が入るリビング、ソファーに座った将馬は笑みを湛えたまま、じっと外を見つめていた。今日の思わぬ感激を繰り返し噛みしめている姿なのだろうなと、寿々花にはそう見える。
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