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最初に気がついたのは堂島陸曹だった。『自衛隊病院に行ってきなさい』と強く言われ送り出された。その結果がさきほどわかったところだった。
すぐに伝えたくて帰宅を待てずに、司令部にいる夫を呼び出してしまった。
『微笑まない男』の横顔はそのまま、いつもどおり冷たく固まってる。でも目元が一気に優しく緩んだ。
「拓人、また大騒ぎしそうだな。いや、陸将補もだな。……いや、俺の心が大騒ぎしてるよ」
今度は兄と次子で仲良い幸せを。
この子たちの幸せを、私たちが守っていくんですよ。お父さん。
寿々花も誓う。私から生まれるこの子と、この子の兄の母となって守っていく――。
いつか冷たく突き放されたここで。寿々花は『微笑まない男』と言われていた夫に抱きしめられていた。明るく陽射しの中、夏の緑の匂いがする風が入るそこで。
今度は『あなたたちの微笑み』を守っていくよ。
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