10.あなたの微笑みのために

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「パパとママが離婚した時に、今度は将馬おじちゃんが『拓人を育てる責任者』と法律で決まったから、拓人を連れて札幌に来たんだ。将馬おじちゃんと一緒に拓人を育てる約束をしたんだ。そこで親友になったんだ」  戸惑い不安そうだった拓人の表情が徐々に和らいできたのがわかる。寿々花も少しだけほっとする。そんな拓人も口を開いた。 「ママが、ぼくを育てなくなったから、離婚したの」  札幌に来て、拓人が初めて『どうしてママは』ということを口にした。  パパに一度も聞かなかったことを、やっと口にしているようにも寿々花には思えた。  岳人パパの決意も固く、いっさいの誤魔化しをしない。 「そうだよ。ママはパパの奥さんとしても嫌になったんだ。ママはもう拓人もパパのこともちっとも見なくなった。ママは他の人と結婚したくなったんだ。だからお別れしたんだよ。新しい恋人を探すためにひとりになりたくなったんだって」 「ぼくのこと、いらなかったんだよね。いつも怒っていたり、スマホばかり見ていたり、お化粧してひとりでおでかけばっかりしていたのも、お弁当もごはんもお祖母ちゃんばっかり作っていたのも、ママは『お母さんの仕事』をしたくなかったんだよね」 「そうだ。だから離婚した。ママがママを辞めたから、将馬おじちゃんが拓人を迎えに来てくれたんだ。寿々花ちゃんも、将馬おじちゃんには結婚をしていなくても子どもがいるとわかっていたけれど、いつか拓人のお母さんになる気持ちで、将馬おじちゃんと結婚したんだよ。知っているんだよ、拓人が結婚したい男の人の子どもだって。ずっと知ってわかっていて、拓人のそばにいてくれるんだよ」 「すずちゃん……も……」
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