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父はまだ帰宅していなかったので、母とふたりきりの時に呟いてみた。父がいると、やはり気を遣うのだ。父親であって、やっぱり旅団長。へたなことを言って説教されるかなという恐れがある。もちろん母も同様だが、女性側の相談は女親に限る。
「そんなに? 近づきたくても館野さんは近づけないでしょう。お父さんが旅団長なんだから。館野さんもそこは心得ているようよ。女性をいっさい寄せ付けない雰囲気を放っているでしょう」
「ああ、うん。そうだね。いつも怖い顔をしてるよね」
自分も『女性自衛官』とわかった途端に、向こうから近づくなとばかりに制されたからよくわかる。
そこで母がため息をついて、寿々花の向かいへとヨキをだっこしたまま座った。
一緒のデザートタイム開始かなと思ったが、正面の母がじっと娘を見据えている。胡麻プリンをひとくち頬張ろうとした寿々花の手が止まる。
「そうね。寿々花には言っておきますね」
あ、自衛官の妻である顔だと察し、寿々花はスプーンを手放し、姿勢をただした。
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