10.あなたの微笑みのために

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「……もう三佐って呼んだらだめかな」 「三佐のままでいいよ。あ、でも。たっくんがもう少し大きくなったら二佐になってるかも」 「三佐もいつか将補になる?」 「どうかな。でも、なるかもね~」 「じゃ、伊藤『しょうほ』パパと一緒になっちゃうから、それまでに、お父さんって呼ぶかも」  いつか『お父さん』と自然に呼んでくれる日が来そう。寿々花はそう思えて、いつもの拓人の口調に戻ったことに安堵して微笑んだ。  そして拓人の目線がまた寿々花のお腹へ向いていた。 「ぼくの、ほんとうの妹なんだ。おなじお父さんの妹。ぼくのほんとうの『きょうだい』ってことだよね。すずちゃんの子がぼくの妹」  やっと、嬉しそうな笑みを見せてくれる。寿々花もほっとした。  寿々花も改めて、繋いでいる拓人の手をぎゅっと強く握った。  拓人も気がついてくれ、寿々花の丸いお腹へと抱きついてくるから、強く抱き返す。  私の息子と娘がいまここにいる……。そう思って。  突然のパパからの告白に衝撃を受けて驚かされ、一気に不安になったことだろう。大好きなパパがいなくなっちゃうと焦ったことだろう。でも、ここ二年あまり、毎日毎日、将馬と寿々花と一緒にいたことが助けてくれたんだと感じられた。それがあったから、拓人はまた、いつもの拓人にすぐに戻ってくれた気もした。  本当の父であっても、本当のパパじゃなくても。継母でも。  私たちが重ねてきた日々がある。普通の形ではないけれど、私たちだけの、拓人のためのファミリー。その日々が、今日の拓人を助けてくれたと思いたい。  そう、ファミリーは、そうして形を成していく。いざというとき、家族を救う。一緒に過ごしてきた日々の思い出がきっと。
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