6.一尉の悪い噂

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 すぐに察することができる一尉に驚きながらも、さすがだと寿々花は観念する。 「あなたが悪く言われていて……広まったらいけないと思って」  また彼が息をひいたような驚きを見せて、すぐにため息をついて眼差しを伏せた。 「そんなことをわざわざ? そうですね。お母様に報告してください。お父様から聞きます。まあ、だいだい察することができます。婚約破棄したことについて、子供がいることについて、好きなように予測されているのでしょう。どこの駐屯地でも起きた現象ですよ。そろそろ囁かれるだろうと構えていました」 「でも! 一尉は悪くないじゃないですか!」  そんなふうに彼をかばう寿々花を、彼はいままで以上に冷ややかに見下ろしている。 「悪いままにしておいてください。それで結構です。あなたが案ずることではありません」  あなたは無関係、首を突っ込むな。余計なお世話だ。そう言われているに等しい冷たい視線が突き刺さる。   寿々花はゾッとした。もっと怖い顔を隠していたのだ、この一尉は。
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