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堂島陸曹とともに仰天させられたが、音楽隊長が言うには『司令部、あー、旅団長から直々のご指名』と困ったように言われた。
伊藤陸士長の父親だから、身内のことは身内の事情を知る者同士で任命されたことを、音楽隊長も重々承知なのだ。
事情を知っている隊員が、ちょうど音楽隊に二名いるではないかということになったらしい。
堂島陸曹は、館野一尉の事情を当時から知っているために指名される。
堂島陸曹も旅団長直々のご指名とのことで茫然としていたが、寿々花が今回の状況に至った事情を話すと彼女も『はあ? なにそれ! 絶対になにかあるでしょ。それ』と怒っていた。
でも事情を匂わせないよう、自然に接するという指令のもと、その任命を二人で受けることになった。
上品な佇まいのお祖父様とお祖母様に連れられてきた男の子が、寿々花と堂島陸曹を見上げている。
「たっくん。ご挨拶をしましょうか」
「こんにちは」
お祖母様に促され、ちょっと人見知りの様子を見せながら男の子が挨拶をしてくれた。
館野一尉より先に対面してしまい、寿々花は申し訳なくなる。のだが。
その男の子を一目見て、気がつく。そっくりじゃない? 一尉に。一瞬でそう感じられたのだ。
「閲覧行進が始まりますので、まずはそちらのお席へとご案内いたします」
上官である堂島陸曹が率先してエスコートをしてくれる。
音楽隊は一般市民と触れ合う機会が多いので、こうした接客対応を勉強する良い機会だと、寿々花は思うようにした。
気のせいか。お祖父ちゃんとお祖母ちゃんに連れられながらも、男の子がぐずっているように寿々花には見えた。
ほんとうに自衛隊好きか? 無理矢理つれてこられたんじゃないのこれ。不安になってくる。
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