10.自衛隊大好き?

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「堂島陸曹、伊藤士長、ご苦労様でした。交代いたします」  敬礼をした男の輝かしい姿に、寿々花は惚れ惚れしていた。  やっぱり素敵。すごーくかっこいい。  こんな最高の姿を息子さんはどう思うかなと……。すぐに緊張も襲ってきた。  元は義両親だったはずの夫妻が席を立ってお辞儀をする。 「本日は不躾な申し出を聞き入れてくれて、ありがとう。将馬君」 「ご無沙汰しております。今日はご招待をありがとう」  親しげな口調の元義父の様子から、元々ご縁があった間柄が伝わってきた。 「拓人くん、お祖父ちゃんのお友達の自衛隊さんよ」  どうして自衛隊の知り合いがいるのか。そう説明されているようだった。  五歳の男の子が、祖父母の前に押し出される。  館野一尉が制帽のひさしから、あの冷めた視線を男の子に降ろした。  男の子も見知らぬおじさんがやってきて、きょとんとしているが、視線が合った。  堂島陸曹も寿々花の隣で緊張しているのがわかる。  大人たちにとっては緊迫の一瞬だ。 「こんにちは。なるさわ・たくとです。自衛隊大好きです」  冷たい視線の男がそのまま黙っている。  でも寿々花は見てしまう。きっと堂島陸曹も気がついている。  冷たい顔を保った男の目が熱く潤んでいることに。
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