11.元義両親の目的

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11.元義両親の目的

 役目を終えた寿々花と堂島陸曹は、エスコートを終えたら自分たちも本番の準備で忙しくなる。急いで演奏マーチの準備をして音楽隊と合流。  役目のマーチングを終えたら、今度は旅団長室へと報告のために直接来るようにと言いつけられていた。  音楽隊の仕事は今日はここまでで、あとはエスコートの補助役をすることになっている。  そのため、昼食は音楽隊とともにせず、堂島陸曹と食堂で一緒に取った。 「まさかのお役目だったけれど、ホッとしたわね。楽しんでくれたようで良かった」 「そうですね。自衛隊好きは本当のようでしたね。安心しました」 「そうかな。お祖父様のほうは、ちょっと複雑そうだったよね。はっきり言わせてもらうと、私から見たら『今更何様』なんだけど」  きっぱりしている性格の堂島陸曹らしい言い方だった。  冷たく言い放って、でも熱々のカレーを頬張っている。 「絶対に、自衛隊好きの孫を引き合いにだして、他の狙いがあると思うわよ」 「……母もそう言っていたのですが。一尉が会うと決断したことですから」 「だから今更何様なのよ。彼、潔い性格をしているから、さっと身を退いて、首も突っ込まず、恨み言も言わず、ひたすら受け入れて過ごしていたのに。あちらの都合で壊れた責任も負わずに、全部、館野君に押し付けたじゃない。あれほどの男に煮え湯を飲ましておいて、またなにかを押し付けようとしているんじゃないかな。いざとなると受け入れちゃいそうで心配」  当時の有様を知っているからなのか、堂島陸曹は腹に据えかねるものがあるようだった。  彼が初めて息子と会えた感動のシーンを見届けられただけでも良かったと寿々花は思えてるのだが、確かに、不穏な空気はまだ拭えていない。
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