11.元義両親の目的

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 だが、あの一尉のことだ。それもわかった上で決断をしたことなのだろう。母が『なにかおかしいわね』と言うぐらいだから、父も警戒をしてくれていると信じている。    昼食後、父がいる司令部へと堂島陸曹と向かった。  旅団長室へと訪ねると、かっこよくしていた正装のジャケットを脱いでくつろいでいる父がデスクに座っていた。  堂島陸曹と敬礼をして、『任命のご案内を終えました』と報告をする。 「おう、ご苦労様。あ、気を抜いていいからな~」  自宅にいる父そのものだった。寿々花はそれだけで『あ、そうなの。今日は気を抜いていいのかな』と心が緩んだが、さすがに堂島陸曹は気を抜かず『ありがとうございます』と、涼しい面差しのままだった。  広い旅団長室に置かれている応接用のテーブルとソファーに促され、そこで父と向き合った。  お祖父様とお祖母様の様子、男の子の様子、館野一尉と息子さんの初対面を報告。ここは寿々花が娘として、父に気易く報告する形でほとんど一人で伝え、補足が必要なところは、ところどころ堂島陸曹が報告してくれた。 「そうか。自然な形で仲よさそうだったか。よかった、よかった。ま、父親と名乗ることはまだできないだろうがね。あちらが送ってくるという写真を見せてもらったこともあるんだが、これまた館野に似てるなという感じだったんだよな。血で通じるものって、あると思うんだよな。父さんだけの感覚、ただのロマンチストかな~」  旅団長なのに、すっかり気を抜いてお父さんとして喋っているので、ついに堂島陸曹も肩の力を抜いてしまったようだ。 「私も子供がいますので、同じように感じることはあります」 「うん、そうそう。子供を持って感じるよね。まさにそれ!」
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