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父とのお茶会もひといきれのときになって、館野一尉がお子様と元義両親と一緒に、旅団長室に帰ってきた。
お客様が来られたので、寿々花と堂島陸曹はお茶をしていた食器を片付け、テーブルを空ける。
「ここが、おじさんがいまのお仕事しているお部屋だよ」
「わ、おっきい」
「北海道の南の地方一帯の部隊をいっぱいまとめている偉い将軍さんのお部屋なんだ」
賑やかに帰ってきたほほえましい様子に、寿々花もほっとする。とっても仲良くなれたようだった。
「将補、ただいまもどりました」
「うむ。楽しんできたかな」
一尉が敬礼をして、父が敬礼を返す様子を、男の子がわくわくした様子で見上げていた。
それに気がついた父も、にっこりと見下ろして、拓人君に敬礼をする。
「司令部へようこそ。拓人隊員。楽しかったかな」
「はい。たのしかったです」
拓人君も一尉の真似をして敬礼をした。
「伊藤陸将補、本日は孫のために手を尽くしてくださって、御礼申し上げます」
「ありがとうございました」
元義父と元義母が揃ってお辞儀をした。
「お孫さんが楽しんでくださったなら、なによりです。私も長男のところに、男の子の孫がおりましてね。お気持ちわかります」
「さようでございましたか。館野君から伺いましたが、本日、門までお迎えにきてくださった音楽隊員の陸士長さんは、将補のお嬢様だそうですね。お嬢様も同じ自衛官とは素晴らしいことです」
「はい。自慢の娘ですよ。音楽を続けてきましたが、まさか自衛隊の音楽隊に入隊するとは思わなかったものですから。ですが、私の仕事を理解して同じ仕事に就いてくれたことは、嬉しく思っています」
そこで、鳴沢の父が黙り込んだ。かえって、寿々花の父はにこにこしたまま。
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